anezakimanの部長日記

メーカー部長、中小企業診断士、通訳案内士(英語)、放送大学大学院修士全科生の日々奮闘記

読書:伊集院静さん

書店で手に取った伊集院静さんの『無頼のススメ』を読みました。 ちょっと感じ入りました。

無頼のススメ (新潮新書)

無頼のススメ (新潮新書)

 

 

  • 「ビギナーズラック」というと、単なるマグレ当たりみたいに聞こえるかもしれませんが、私は、それこそが今まで人類が生き延びてきた原因ではないかな、と考えています。ヒトは生まれ出でてたちまち死ぬようにはできていない。何とか自分の目で見て、感じて、危険を乗り越えて生きようとする。それこそが原始から人類に与えられているビギナーズラックというもので、生きものとしての直感をいかに働かせるか、磨いていくか、それが人生のあり方を決めていくのだと思います。
  • 人が生きていく上では、情報より「情緒」が大切です。情緒には年季というか、歳月がかかる。それは人間の姿かたち、ふるまいの情緒にも通じることです。
  • 「天よ、願わくば我に七難八苦を与えたまえ」(山中鹿之介)
  • フランス人の何より偉いところは、「セックスの中にある小さな死」を見つけたことです。「セックスとは果てるたびに小さな死と出会うこと」(ジョルジュ・バタイユ)。負けるな、最後まで倒れるな、かりそめの死、そしてまた復活する。
  • 異質なものや面倒を避けたい教師は自分の枠の中に子どもを置こうとする。教える側はそれで安堵できるかもしれないが、ほとんどの子どもは教える側の器以上にはならない。”つまらない子ども”になって当然だろうと思うのです。
  • 自分のフォームで、少しでもいいから勝ちを先攻させておくこと。それが九勝六敗を目指せということなのです。
  • 自分が駄目な状況というのを想定できる人は、それに対していつも恐怖心があるから、人の何倍も努力しようとする。油断するとつい手を抜いてサボったり遊んでばかりいたり、怠け者の弱い部分が自分にあることがよく分かっているから、徹底的に押し込めようとするものです。
  • どこまで行っても他人の評価が基準になっていて、自分の基準で、「個」として考えることができない。
  • 人生で何がしかのことを成し遂げた人たちに共通しているのは、苦悩や不運のどん底にあるような時期でも、後から振りかえって考えてみると、素晴らしい運と出会っていること。人の生きる姿勢であったり、進む道を決めるのは、人との出会い、あるいは何ものかとの出会いだと私は思います。だからいつも言うのは「差し伸べている手の上にしかブドウは落ちてこない」。
  • うつむかない。後退しない。前のほうへ行く。それからウロウロする。なるべく人のいるところへ行く。光ある方へ歩んで行くこと。うつむかず、嘆かず、泣かずに。

この著者の『乳房』や受け月』をかなり昔に読んだことはありましたが、この本をきっかけに『ノボさん』、『海峡』、『いねむり先生』をこの3週間ほどで続けて読みました。文学小説の類いには、しばらく遠ざかっていましたが、友情、故郷、惜別、喪失感など、ビジネス的なマインドとは違う人間的な感覚が蘇ってきて、身体のなかに心地良いバランスができたような気がします。