anezakimanの部長日記

メーカー部長、中小企業診断士、通訳案内士(英語)、放送大学大学院修士全科生の日々奮闘記

読書:「好き嫌い」と経営

楠木建先生の新作を読みました。

「好き嫌い」と経営

「好き嫌い」と経営

 

良きこと悪きことという善悪ではなく(この辺りは野中郁次郎先生の世界ですね)、好きか嫌いかという自分のなかの強い動因が、経営者を内部から突き動かし、それが運動エネルギーとなって「行動のリーダー」ならしめるのではないかという仮説のもと、多様な経営者と対談を行っています。

著者のボケと突っ込みを織り交ぜながら本質的且つユーモア溢れる問いに対する、多様で個性的な経営者の受け答えが実に面白く、抱腹絶倒の場面も多くありました。以下、抱腹絶倒の部分ではありませんが、考えさせられたところです。

  • ポジションやタイトルを獲得したとたん、「エネルギー保存の法則」にはまってしまう経営者が少なからずいる。位置エネルギーがたっぷりの一方で、運動エネルギーがまるでない。「こういう商売がしたい!」「これで稼いでいくぞ!」というダイナミズムがない。せっかく経営資源を動員する力を手に入れたのに、宝の持ち腐れである。
  • 経営者は「行動のリーダー」でなければならない。現実に商売を創り、戦略ストーリーを構想し、ストーリーを動かし、稼ぐ。こうした本来の経営という仕事は、いずれも「何をするのか」「何をしたいのか」という経営者の行動を問うものであり、運動エネルギーにかかっている。 (以上、楠木建
  • 管理は大成功とまったく反対です。大成功するにはブレークスルーしないといけないのだから、管理から成功は生まれない。
  • 自分がコミットメントして、自分がハンズオンでないと、人は絶対に動かない。でも、自分が1から10までやっていたら、人はイヤになる。だから、僕が今育てないといけない人材は創業者だと思っています。
  • 言葉は意思です。命令も発言もスピーチも、言葉を発するとは自分の意思を表すということです。自分で考えずにほかの人に言葉を選ばせるくらいなら、何も言わないほうがいいと思います。(以上、柳井正
  • 複雑なことを簡単に理解させる。これで初めて相手が行動するわけです。常に簡単に考える。非常にシンプルに考える。
  • スティーブ・ジョブズさんの直観というのは、最初の段階では空想物語のような気がします。しかし、ものすごいこだわりで深く考えることによって、可能性がない空想物語がビジョンとなり、やがてビジネスとして具現化される。空想物語からビジネスまでのプロセスをつなげる力が強い人ですね。
  • 課題がない人というのは、仕事をしていない人です。しかしチャレンジすれば、副産物として必ず課題を抱えることになります。チャレンジしている途中の一点を捉えて評価したら、何一つ成果は出てこないし、課題しか見えません。しかし、一皮むけたその先には、もっと大きな成果が出るかもしれない。どんなことであれ、時間的な流れのなかで物事がどう推移したかが大切だと思ってます。(以上、原田泳幸
  • この世界を理解し、どこを変えたいと思うのか。それは世界を経営するということです。でも世界は広いので、自分はその一部分を受け持つしかない。それがサブシステムです。置かれた状況のなかで常に世界を理解し、何を変えたいと思い、何をして生きるのかということ。つまり、世界経営計画のサブシステムを生きることが、人間にとって一番大事だと思い、言い続けています。
  • 歴史の事実を見ると、人間の望んだことの99%は失敗して実現しない。でも、やらなければ新しいことは100%起こらない。その1%に懸けてチャレンジした人が社会を良くし、世界の歴史を動かしてきた。そういう淡々とした事実がわかったら、安心してチャレンジできる。みんな失敗するんだから、失敗しても何も怖くない。成功したら儲けもの、という認識がわかったら、気軽にチャレンジできるようになります。(以上、出口治明
  • 営業というのは、一種の総合芸術ですね。プレゼンテーションや交渉とか、個別のスキルには落とし込めないような総合の力が必要だと痛感しました。
  • 営業マンというのは、会社を代表して営業先の相手と対峙している存在なのです。したがって、常に商売全体を見渡すという経営者的なセンスが求められます。(以上、江幡哲也)
  • 情報ばかり受信していると、自分で考えなくなっちゃいますよね。(前澤友作)
  • 職務上の権限はいろいろあってもいい。ただし人間関係がフラットであることによって、議論が普通にできる環境が整うということです。意思決定するまでの間のフラットな議論こそ、意思決定者に正しい判断をさせる上で何よりも大切な文化です。(星野佳路)
  • 仕事をリタイアしてから死ぬまでに20年あったら、自分で自由になる時間が8万9000時間あるわけです。この時間をどう過ごすかと聞かれたときにノーアイディアだったら、今まで会社でどんなことをやっていても死ぬときは不幸だと思います。
  • 仕事をやっている自分と、死の直前の自分と、その間の15年か20年の自分、この3つの自分について、どうやって生きたいかをちゃんと考えるといいと思います。
  • 最期の瞬間に「ああ、いい人生だった」と言って死ぬには、「あなたはどういう人生を生きたいですか」という質問に対してちゃんと考えて答えられないと。(以上、大前研一