読書:中国化する日本
今週、5年振りに中国に出張に行ってきました。久しぶりの訪問でしたが、面談したパートナーもお客様も、みなぎる自信と貫禄十分で、以前にも増して存在感たっぷりの大国振りを感じました。
出張中に『中国化する日本』(与那覇潤)を読みました。
- 作者: 與那覇潤
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/11/19
- メディア: 単行本
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宋の時代に導入された自由競争とグローバルな社会の仕組み(中国化)と、日本の江戸時代に確立した封建制、身分制、閉鎖的なムラ社会(江戸時代化)を対比させ、これまでの日本や世界の歴史が、中国化と江戸時代化を繰り返してきたこと、そして今後全世界の中国化が不可避であり、日本人も本格的にそれ(グローバル化、競争化社会)に備えよ、というのが論旨のようです。私を含む大部分の日本人にとって、西洋や日本は進んでおり、中国は遅れているという見方を根底からひっくり返す、大変刺激的な本です。
アマゾンのレビューを見ても賛否両論の本書ですが、私にはうなずくことの多い内容でした。政府や公的なものを本質的に信頼しておらず、移動と商売の自由を中心にした徹底的な競争社会のなかで、儲かる事業には素早く参入し、儲からなくなるとさっさと逃げ出すビジネスマンたち。正しいのは自分たちであり、皆さんはこれに従いなさいと普遍的な真理のごとく滔々と自説を語る企業幹部たち。中国でのビジネスで直面するこの手のことは、はるか昔、宋の時代からの中国人のDNAだったのだと思うと納得できます。
問題は、世界が中国化していくとすると、江戸時代へのノスタルジー(ムラや企業的共同体で守られた相互依存的社会)が忘れられない日本企業や日本人は、どう立ち振る舞って生きて行くかです。本書でもいくつかの未来シナリオが描かれていますが、相当な劇薬的な話になっています。
企業と個人にとり、今後の一層の中国化(グローバル化、競争化社会)は確かに不可避と感じざるを得ません。大きな歴史の流れのなかで、そのことを改めて感じ、会社、自分、家族をどうしていくのか、示唆に富む内容でありました。