anezakimanの部長日記

メーカー部長、中小企業診断士、通訳案内士(英語)、放送大学大学院修士全科生の日々奮闘記

読書:イノベーターたちの日本史

先の土日、愛犬ワトソンとの朝昼晩の散歩以外は、家で下記の本を読んでいました。

イノベーターたちの日本史

イノベーターたちの日本史

 

 先般出席したイノベーションに関する講演会で、米倉先生の本の即売会とご本人のサイン会があって、思わず買ってサインもいただきました。

本の帯には【構想40年、歴史家・米倉誠一郎の集大成】とあり、かなり気合いの入った本書は、明治維新前後から近代日本を創りあげた先人イノベーターを描写しています。大隈重信大久保利通などの明治維新の志士たち、三井、三菱の財閥を創設した三野村利左衛門、岩崎弥太郎といった経済人など、歴史上著名な人物をイノベーションという視点で描いています。

その一方で、高い情報感受性を持ってアヘン戦争とその影響から日本の近代化を説いた長崎の西洋砲術家の高島秋帆、世界的科学者・企業家として当時卓越したグローバル人として活躍した高峰譲吉など、歴史からやや埋もれたイノベーターたちの活躍も、いきいきと描かれています。

そうして日本の近代とは、西洋先進国から押し寄せる津波のような外生的挑戦や刺激に、上記のような先人達がいかに創造的に対応していくかという歴史であったと喝破しています。イノベーションの父、シュンペーターの著書から引用して、現存する慣行の延長線上で変化に「順応(adaptive response)」することと、現存する慣行のはるか枠外から「創造的に対応(creative response)」することには大きな違いがあり、後者こそ新たな価値創造につながるイノベーションなのだとの視点です。

自らの可能性に気づき、時代の波に創造的に対応し、新しい価値を付加することのできた近代の日本人を描くことで、グローバリズムや世界的価値観変動の挑戦に直面する現代を生きる日本人にも、先人に倣った創造的対応、イノベーション、新たな価値の創造に励めと活を入れているのです。

日本の近代史、国家建設の戦略や創発、事業経営、イノベーションなどなど、いろいろな面から刺激を受ける快著であり、改めてイノベーションおじさん歴史家の米倉先生の素晴らしさに感銘させられました。