日立の復活劇から学ぶこと
電機産業関連のビジネス書では、三洋電機の『会社が消えた日』、パナソニックの『パナソニック人事抗争史』、ソニーの『切り捨てSONY』と読んできて、興味深いものがありましたが、いずれも他山の石的な反面教師型のインプットでした。そこへいくと日立製作所元会長の以下の書は、先月の日経『私の履歴書』と併せて、ポジティブなヒントを与えてくれました。
ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」 (角川書店単行本)
- 作者: 川村隆
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2015/03/07
- メディア: Kindle版
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まず、社長の役割を「社長機関説」として論じている点に共感を覚えます。
私の意見は「社長機関説」と言えばいいのか、社長も会社の中の他のポストと同じくある役割を割り振られた「機関」の一つであり、その役割とはそれなりの業績を維持しながら会社を成長に導くことだ。経営のプロ(専門職)として、企業価値の持続的向上を実現することだ。難しい任務だが、これを達成してこそ経営者の名に値する。
これを拡張して言えば、室長も部長も一定の役割を割り振られた「機関」の一つであり、こういったプロ的な職務意識が今後はとても大切になると思っています。
これに関連して、筆者が副社長時代に、会社の代表としてあちこちに出向いて忙しく過しますが、結局何もできていなかったという反省の弁が出て来ます。これもサラリーマンならよく分かる現象で、上にいえばいくほど、祭り上げられて引っぱり廻されて、本人は忙しく働いているつもりでも、会社に貢献するアウトプットを出しているかと言えば、そうでもないことが多いと感じます(自戒も込めて)。
こんな沈滞ムードを吹き飛ばすためにも、改革を急いで、日立という船を前に動かさないといけない。私たち経営陣は「100日プラン」に着手した。近づける事業と遠ざける事業の選別や公募増資、日立本体の各事業のもたれ合い体質の改革、そして次世代事業を社内外に示すことなど「やるべきことリスト」を、4月から100日でまとめ、実行に移し始めたのだ。
この「100日プラン」も参考になりました。とにかくやるべきことを短期間でまとめて、あとは迷わずにやるだけにする。これを私も我が部に取り入れて、今年度の業務目標策定で「30日プランと180日実行」を行うことにしました。以前に聞いた「5%計画、95%実行」の実践です。
最後に、日立の復活劇の最大のポイントは、当時の庄山悦彦会長が、元日立副社長ながら当時69歳で日立から離れて6年になる中西氏に、社長就任を要請したということに尽きるのではないでしょうか。おそらく本来は社長になる器だった中西氏に、何年も経って復職を懇願できる人事の懐の深さ(あるいは危機感を踏まえたまっとうな人物主義)、こんなことはどの会社でもできることではないと思います。
というわけで、電機業界からいろいろ学ぶことが多い昨今です。