anezakimanの部長日記

メーカー部長、中小企業診断士、通訳案内士(英語)、放送大学大学院修士全科生の日々奮闘記

電機業界と我が業界

先般のパナソニック人事抗争本に続き、下記のソニー本を読みました。

切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか

切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか

 

 こちらもかなり壮絶な内容でした。17年間で6度におよぶ合理化計画で、8万人規模に達する人員削減の背景にあった経営者の思案思考の過程や、人員削減の象徴的舞台となったキャリア開発室(通称リストラ部屋)を軸にした人間模様が、赤裸々に語られています。世界的な優良企業のはずだったソニーにおいて、かくも苛烈なリストラが行われていたとは。ここでも、経営トップの舵取り不全、戦略の迷走振りがハイライトされています。

パナソニックソニーも、そして本日の決算発表で2,000億円以上の赤字を公表したシャープも、かつては日本の電機産業の雄として君臨した企業群でした。優秀な人材が集まり、名物創業者以降もスター経営者を輩出しました。それなのにこの苦悩振りは何を物語っているのでしょうか。

世の中の変動、市場の嗜好の変化の激しさに翻弄されやすい消費材市場であること、さらに商品がいわゆるモジュール型の組み立て産業に属し、比較的簡単に分業の組み合わせによる参入が可能なこと、実際に韓国や台湾勢といった競合の台頭など、ここまでは一般的な電機産業に対してある見方です。もう一つ、人の問題があるような気がしています。毎年数百人規模の大量採用を行い優秀な人材を集め、そのなかで苛烈な競争があり、結果としてのし上がってきた才気あふれる経営者が、◯◯らしさが喪失されているといった市場の大きなプレッシャーのなかで大きな手を打ち、それが市場の方向性と合わない場合に大きくロスしてしまう。一方で実力経営者が出てくれば、豪腕を発揮して再び成長軌道に乗ったりします。

我が社、我が業界はといえば、B-to-Bの地味な素材屋で、資本集約的な産業であり、また熱間加工含む多工程が必要な擦り合わせ商品であることは、競争条件の緩和をもたらしていると思われます。一方で経営人材的には、質、量とも十分とは言えない状況ですが、それだからこそ集団指導的堅実経営、大戦略絵巻を描くのではなく、Operational Efficiencyの向上を皆で一生懸命やってきたのでしょう。従ってこれまでのところは、大当たりもありませんが、極端に沈むこともありませんでした。今後ともこのままで良いのか、ちょっと分かりませんけど。