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anezakimanの部長日記

メーカー部長、中小企業診断士、通訳案内士(英語)、放送大学大学院修士全科生の日々奮闘記

読書:人事は難しい

この年頃になってきて、会社のなかで人事目標、人事異動、人事考課など、人事的な物事に携わることが増えてきました。そしてその難しさも実感しています。そんな動機もあって、人事関係の基本的な勉強や書物に接しています。

まずはアカデミックの世界から。放送大学大学院の本学期から履修している科目に、「人的資源管理」があります。

人的資源管理 (放送大学大学院教材)

人的資源管理 (放送大学大学院教材)

 

人的資源管理を、 トップ・マネジメントの視点(人的資源管理の基礎知識)、担当者の視点(人的資源管理の制度と機能)、企業と社会の視点(多様な労働者たち)という3つの視点で概観するものです。現時点で、基礎知識を学習しましたが、特に日本的人的資源管理の変遷が興味深かったです。その特徴として、以下3つを挙げています。

  1. 知的熟練を開発する「幅広いキャリア開発」(エキスパートよりジェネラリスト)
  2. 知的熟練の開発にインセンティブを提供し長期にわたって競争に焚きつける「職能資格制度」と「遅い昇進」(年次管理、同期横並び昇進)
  3. 異動にイニシアチブを発揮する「強い人事部」(ラインに相談があっても最終的には人事が決める)

たしかに典型的日本企業の弊社においても、見事に適用されている考え方であります。しかしながら、平成雇用不況期に入り、これら伝統的な日本的組織モードが環境適合していないケースも目立ってきました。弊社の人事制度でもいろいろな矛盾や弊害が出ています。これからも試行錯誤を繰り返しつつ、今後の進化型として以下4つの方向性を指摘しています。

  1. マネジメント人材とエキスパート人材の分化
  2. インセンティブ制度:能力主義から役割主義へ
  3. マネジメント人材に対する人事権は人事部集中、エキスパート人材に対する人事権はライン分権
  4. キャリア自律支援(社内公募制度や社内FA制度)の一方、早期選抜対象者の個別管理強化

確かに理屈は分かりますが、具体的にこれらを会社として、あるいは部としてどう制度化、施策化して進めていくかは、難しい課題であります。

次は、人事部経験の長い実務家が描く実際の世界の話。

人事部は見ている。 (日経プレミアシリーズ)

人事部は見ている。 (日経プレミアシリーズ)

 

こちらで興味深かったのは、大企業における課長クラス以上の出世の条件を考察していることです。それは「(結果的に)エラくなる人と一緒にやれる能力」であり、これを持っている人は、世情言われるような単なるゴマすりや茶坊主ではなく、大組織の内部管理機構で政治的に活躍できる能力を持っている人としています。そしてその具体的能力として、次の3つのポイントを挙げています。

  1. 上司に対する接し方:上司の周囲の状況、言動を把握しながら先手先手を打てる「察する力」
  2. 他部課との調整力:組織でどのボタンを押せば話が進むのかをつかむ感度
  3. 上司の枠内に収まる能力:部長以上になると、社長や上級役員を超えた能力の人は必ずしもトップにはなれない

仕事ができるのは当然として、上記のような観点は確かにありそうですね。3については、日本生命出口治明さんや、いったん関連会社に出されて危機時に戻ってきた日立製作所の川村隆顧問などが当てはまりそうです。

最後はもっとドロドロした現実の世界の人事ドキュメント本。

ドキュメント パナソニック人事抗争史

ドキュメント パナソニック人事抗争史

 

うーん、 これは面白すぎました。巨大松下電機産業の衰退の背景に、こんな人事抗争史があったとは。私自身中村邦夫前々社長の「破壊と創造」経営に一時期心酔していただけに、彼が「プロのサラリーマン」として上司に対する絶対的な忠誠心の一方で、部下に対しては恐怖政治的な強権人事を行い、社内で何も言えない雰囲気を蔓延させていたとは、ちょっと驚きでした。と同時に現社長の都賀一宏氏の「言いたいことを言い合える、活気あふれる会社」を目指すというスローガンのもとで、数々の負の遺産を克服し、足元復権しつつあるパナソニックの会社としての強み、人材の奥の深さも感じさせられました。

パナさんほどの人材もダイナミズムもない弊社においては、こんなドロドロした人事抗争は起きようがないと思いますが、エラい人が言ったことには忠実に従いがちな社風を持つ弊社にとっても、他山の石とすべきと感じた次第です。